社長AIブログ 第7回 | 生成AI時代、最初に限界を迎えるのはAIではなく人間だった

この記事の4行要約
- AI開発が高速化するほど、真のボトルネックはAIではなく人間の「判断待ち」に移っていく
- 選択肢を大量に作れるAIに対し、選ぶコストは減らず、経営者が単一障害点になりやすい現実がある
- 「何をやるか」より「何をやらないか」を決める判断こそ、AI時代の経営者の本質的な仕事になる
- 本記事では、AIのスピードに人間の意思決定を追いつかせるための仕組み化のヒントを解説します
小山 才喜こやま さいき
得意領域
元マイクロソフトの技術営業、ジョルダン社での事業立ち上げを経て独立、起業13年目の生涯現役社長
など著書多数
保有資格
Microsoft 認定資格(MCP)を30以上保持したタイトルホルダー
前回、
「AIで楽になるはずが、なぜ私は1日20時間働いているのか?」
という話を書きました。
【このシリーズの過去回一覧】
AIを使えば仕事が速くなる。
でも、
速くなった分だけ新しい仕事を入れてしまう。
結果、
全然楽にならない(笑)
という話です。
今回は、その続きをもう少し真面目に考えてみたいと思います。
最近のAI開発で、
はっきり分かってきたことがあります。
それは、
最初にボトルネックになるのはAIではなく、人間だ
ということです。
昔のボトルネックは「作ること」だった
以前のシステム開発では、
一番時間が掛かるのは、
作ることでした。
要件を決める。
設計する。
コードを書く。
テストする。
直す。
またテストする。
1つずつ進めるしかありません。
例えば、
開発者に実装を依頼すると、
「3日ください」
「1週間掛かります」
というのは普通でした。
だから、
その間に私は別の仕事をする。
自然に待ち時間がありました。
今は違います。
「もう終わったの?」が普通になった
AIに作業を依頼する。
少し別の仕事をする。
戻ってくる。
終わっている。
レビューを依頼する。
コーヒーを飲む。
戻る。
終わっている。
修正を指示する。
メールを1本返す。
戻る。
また終わっている。
昔は、
開発者を待っていた。
今は、
AIが私を待っている。
完全に逆転しました。
そしてAIから、
「次の判断をお願いします」
がどんどん飛んできます。
AIが速くなるほど「判断待ち」が増える
例えば、
Claude Codeが実装する。
OpenAIがレビューする。
修正案が出る。
設計変更案も出る。
そして、
「どちらを採用しますか?」
となる。
ここで止まります。
なぜなら、
最後に決めるのは私だからです。
A案で行くのか。
B案で行くのか。
今回は直すのか。
次のフェーズに回すのか。
品質をどこまで求めるのか。
今リリースするのか。
まだ待つのか。
この判断は、
AIに相談はできます。
でも、
決める責任までは渡せません。
結果、
AIの作業が速くなればなるほど、
人間側の判断待ちが増えていきます。
人間がSingle Point of Failureになっている
システム設計では、
Single Point of Failure、
つまり、
そこが止まると全部止まる箇所を作るな、
という話があります。
最近の私の開発体制を見ると、
OpenAI。
Claude Code。
GitHub。
Azure。
全部動いている。
でも、
私が寝る。
全部止まる(笑)
つまり、
私自身がSingle Point of Failure
になっています。
これはよろしくない。
AIを使って開発チームを作ったつもりが、
最終承認者が1人しかいないため、
そこに全部の仕事が集まっています。

AIは100案出せる。でも選ぶのは人間
AIのすごいところは、
案を大量に出せることです。
製品名を100個。
キャッチコピーを50個。
事業案を20個。
画面案を10個。
技術案を5個。
昔なら、
「とりあえず3案出してください」
だった世界です。
今は、
「もっとください」
と言えばいくらでも出る。
ところが、
選択肢が増えれば増えるほど、
選ぶ仕事も増えます。
これは結構重要です。
AIは、
選択肢を作るコストをほぼゼロにした。
でも、
選ぶコストはゼロになっていない。
むしろ増えている場合があります。
「考える仕事」がなくなるわけではない
生成AIが進化すると、
ホワイトカラーの仕事がなくなる。
そんな話もあります。
一部はそうかもしれません。
ただ、
今自分で使っていて感じるのは、
考える仕事がなくなるというより、
考える仕事の密度が上がる
ということです。
昔なら、
実装待ちの3日間に考えればよかった。
今は、
30分後に次の判断が来る。
また30分後に次。
また次。
頭を切り替える回数がものすごく増えます。
技術。
経営。
マーケティング。
契約。
製品。
インフラ。
全部AIが高速で進めるので、
こちらも高速で切り替えないと追いつきません。
これは体力を使います。
経営者にAIが刺さる理由も、ここにある
逆に考えると、
生成AIが経営者に刺さる理由もよく分かります。
経営者の仕事は、
もともと、
判断する
優先順位を付ける
リスクを取る
やることを決める
やらないことを決める
という仕事が多い。
AIが、
調査。
資料作成。
設計。
実装。
分析。
を高速でやってくれると、
経営者は、
判断のところに集中できます。
だから相性が良い。
ただし、
判断できる量にも限界があります。
ここが今の私の課題です。
「何をやるか」より「何をやらないか」
AIでできることが増えると、
全部やりたくなります。
新製品。
新サービス。
既存製品改善。
Webサイト改善。
営業資料。
教育事業。
分析。
システム移行。
全部、
「できる」
と言われる。
でも、
会社のリソースは無限ではありません。
私の時間も無限ではありません。
だから最近、
一番重要なのは、
何をやらないか
ではないかと思っています。
AI時代は、
できないから諦める、
ではなく、
できるけどやらない、
という判断が増える。
これは結構難しい。
AIに優先順位まで考えさせる
最近は、
ここもAIに手伝わせています。
「この10個の案件を、
事業価値、
緊急度、
開発コスト、
既存顧客への影響、
将来性
で評価して」
というように、
優先順位のたたき台を作らせます。
かなり便利です。
ただし、
最終的には、
「会社としてどこへ行きたいか」
という軸が必要です。
AIは、
合理的な案は出せます。
でも、
会社の覚悟までは持っていません。
「今年はこれに賭ける」
という判断は、
やはり人間の仕事だと思います。
人間側にも「スケーリング」が必要になる
システムでは、
負荷が増えたら、
サーバーを増やす。
処理を分散する。
キャッシュを入れる。
キューを使う。
など、
スケーリングを考えます。
人間も同じかもしれません。
全部を自分で判断しない。
判断基準をルール化する。
AIに任せてよい範囲を決める。
自動承認できるものを増やす。
例外だけ人間が見る。
こういう仕組みを作らないと、
AIがいくら速くなっても、
最後に人間が詰まります。
つまり、
AI導入の次は、人間側の業務設計を変える必要がある。
最近はそう思っています。
「社長の承認待ち」を減らしたい
私自身、
今の開発では、
「小山承認待ち」
が増えています。
これは良くない。
会社でもよくあります。
全部社長が見ないと進まない。
全部部長が承認しないと進まない。
AI時代にこれをやると、
AIのスピードを全部殺します。
だから、
今後は、
どこまでAIに任せるか。
どこまで自動化するか。
どのレベルから人間を見るか。
この線引きをもっと作らないといけない。
AIを導入するだけでは、
会社は速くならない。
意思決定の仕組みまで変えて初めて速くなる。
これは大きなテーマだと思っています。
AIは寝ない。でも私は寝る
AIは、
夜中でも動きます。
休日でも動きます。
文句を言いません。
疲れません。
でも、
私は寝ます。
体調も崩します。
集中力も落ちます。
普通の人間です(笑)
だから、
AI時代に一番必要なのは、
AIをもっと速くすることではなく、
人間が無理なくAIの速度を使える仕組み
なのかもしれません。
最近は、
そんなことを考えています。
AIを使い倒す。
でも、
AIに使い倒されない。
このバランスは、
まだ私もよく分かっていません。
ただ、
1ヶ月ぶん回してみて、
一つだけ分かりました。
AIの限界より先に、人間の限界が来る。
これは本当です(笑)
次回は、
そんなAIを、
コードを書くところだけではなく、
Azureへのシステム移行
にまで入れてみた話を書きます。
ここまで来ると、
AIは「プログラマー」というより、
かなり普通のITプロジェクトメンバーになってきます。
Artisan(アーティサン)とは
Artisan(アーティサン)とは、腕の良い職人を意味する言葉です。
アーティサン株式会社では、技術をつくること自体を目的とせず、使われ続ける価値として社会に届けることを使命としています。
モビリティ事業は公共交通事業者や自治体向けに、バスロケーションシステム「バス予報」、予約配車システム「オンデマンドバス予報」、GTFS作成支援「まかせてGTFS」、お知らせ配信「かんたんAlert」などを提供しています。
MSクラウド事業はMicrosoft 365、SharePoint、Power Apps、Power Automate、Copilot Studioなどを中心に、コンサルティング、設計、構築、開発、研修、内製化、運用支援を提供しています。
2つの事業を通じて、企業と社会が自らの力で最適解を導き出すための支援を行っています。
気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
また、技術を追い求めながら会社と一緒に成長していける仲間も、積極的に募集しています。
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